スポンサーリンク

「透析生活17年:新聞記者の移植体験記」山本晃(2011)岩波書店|慢性腎臓病保存期50年を目指して

透析と腎臓移植の体験記「透析生活17年:新聞記者の移植体験記」を読みました。

2011年に出版された本ですので、治療などの医療面での情報は少し古いようにも思いましたが、この本の魅力は、単なる人工透析や腎臓移植の話ではないところにあると思います。

人工透析をしながら仕事を続ける山本晃さんの気持ちやご夫婦、家族の気持ち、そんな精神面の内容が私の心には響きました。

文中で著者山本晃さんも述べているように、腎移植を勧める内容でもなく、夫婦間の腎移植、臓器提供が愛情のバロメーターを示すものでもない、とても中立な立場で書かれている点も良かったです。

透析生活17年――新聞記者の移植体験記

スポンサーリンク

働きながら35歳から人工透析を開始

著者は、新聞記者という仕事柄もあってか

  1. 腹膜透析(CAPD)の認知度を上げたい
  2. 「免疫寛容」という移植後に免疫抑制剤を飲まなて済む新しい手法を紹介したい

という2点のタイムリーで話題性のある情報を伝えることを目的に本を出版されたそうですが、私を含め、読者の多くはそのプラベートの内容の方に反響が多かったようです。

仕事と人工透析

35歳から17年の間、人工透析(腹膜透析・血液透析)をしながら、激務と思われる新聞記者の仕事をされています。職場や自分の気持ちと、どう折り合いをつけるかなど、仕事をしている私には参考になることが多かったです。

深夜の仕事は「シンデレラボーイなので」と切り上げた。(中略)一人になってから「これでいいんだ」と自らに言い聞かせたが、葛藤は帰りのタクシーの中でも続いた。歯がゆい思いをしたことは忘れられない。43p

自分を守りながら社会で働くためには、自分の気持ちを理性で自制しなくてはいけないのだなっと思いました。

腎臓移植

35歳から人工透析を導入して、50歳になる頃に妻から臓器提供の申し入れがあったそうです。そして2009年、妻からの腎臓移植を受けられています。

「夫婦は運命共同体だと思うの」6p

※同時に「臓器提供の有無は、愛情を示すバロメーターではない」ということもおっしゃっています。

免疫寛容

山本晃さんは、腎移植後に免疫抑制剤を服薬しなくても良くなる「免疫寛容」という新しい方法で腎臓移植をされたそうです。

『この「免疫寛容」の定義は、「自己組織とドナー組織に対してだけ、免疫反応が起こらない代わりに、その他の外敵、異種組織に対してはきちんと免疫反応が残っている状態です。』こちらを参考にしました。

現状として、この「免疫寛容」という新しい手法がどのような位置づけであるのかは、私には分かりません。素人ながらに調べてみても、まだ正式に確立された治療法ではないのかなっといった印象でしす。

ただ、2009年に腎移植をされて約10年弱が経過した今、著者である山本晃さんはどのようにお過ごしなのでしょうか。

腎臓移植のその後についての知る機会があるといいなと思いました。

おすすめの闘病記

黒木奈々『未来のことは未来の私にまかせよう』

病気を抱えたり、闘病しながら、働く女性におすすめしたい本です。キャリアがようやく軌道に乗り始める30歳を超えた頃に病気になり、仕事や恋愛、家族との葛藤が描かれています。自分自身と重ね合わせて、共感することが多くありました。

竹原慎二『見落とされた癌』

タイトルの通り、癌の診断を見落とされたことへの憎しみのような気持ちを全面に感じて、読んでいて少し疲れてしまうような気もしますが、病気との戦い方などについては参考にできる点が多くありました。

山本晃『透析生活17年:新聞記者の移植体験記』

坂井建雄『腎臓のはなし』

➡️レビューはコチラ

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク